ブロックチェーン技術でロジスティクスに革命が起きる!

ビットコインなどの暗号資産を支えるブロックチェーン技術。取引履歴を管理できることから、金融・保険分野や公共サービスなどでこのブロックチェーン技術が応用されています。とりわけ、物流分野でのブロックチェーン技術の利用が期待されます。そこで、具体的事例や今後の展望について述べたいと思います。

ブロックチェーンが物流に応用できる理由

まず、ブロックチェーンとはどのような技術なのか、おさらいしましょう。

台帳を分散管理するブロックチェーン

暗号資産の基幹技術であるブロックチェーンは、分散台帳の仕組みのひとつです。従来の中央集権的なシステムでは、すべてのデータが1カ所に集められました。それに対し、ブロックチェーンは、取引履歴等の情報を「ブロック」にまとめて、鎖のようにつなげます。ブロックの鎖として管理される全員の台帳情報が、ネットワークでつながる全員に分散されます。鎖を構成する各ブロックにはハッシュ値が含まれ、誰かが取引データ等の情報を改ざんすると、ハッシュ異常が検出されます。この結果、ブロックチェーンが取引の不正を非常に困難にするのです。

契約の自動化するスマートコントラクト

ブロックチェーン技術を取り上げるうえで欠かせないのが、スマートコントラクトです。スマートコントラクトを簡単に述べると、契約の自動実行です。スマートコントラクトは、最初の提唱者であるアメリカのコンピュータ科学者ニック・スザボ氏が引用した自動販売機の例で説明できます。

利用者が自動販売機に効果を投入し、商品を選択するという2つの契約条件を満たすとしましょう。この場合に、自動的に商品が出てきて購入者の手に渡るという契約が実行されます。このような契約の自動化が、ブロックチェーンのスマートコントラクトで使用可能になります。

ブロックチェーンの物流への具体的事例


では、ブロックチェーンはサプライチェーンやロジティクス等のビジネスのどのように応用されるのか、そしてそれは可能なのでしょうか?

海外ではすでに物流業界でのブロックチェーンの商用利用が

現状では、ブロックチェーン技術のロジスティクスへの応用を確かめる実験が行われている段階です。エストニアでは政府が国民サービス向けに商用化していますが、日本国内では商用化の事例はありません。

物流業界でIT化に一番取り組んでいるのが、宅配業界です。アメリカの郵政公社であるUSPSは、2015年ごろからトラッキングの仕組みにブロックチェーンを活用する実証実験を行なってきたといいます。この背景には、郵便物が届かない、あるいは貨物の紛失も多いといったアメリカ固有の事情があります。そこでブロックチェーンを使って、トラッキングの仕組みを低コストで構築する試みが検証されています。

他方日本の場合は、宅配サービスのレベルが高く、アメリカとは事情が異なります。そのため、会社の枠を超えて社会インフラ構築のためにブロックチェーン技術を使うものとみられます。

偽造医薬品のチェックにブロックチェーンが


たとえばドイツの大手国際輸送物流会社のDHLとアイルランドのコンサルティング会社のアクセンチュアは、医薬品の製造工場から消費者の手元に届くまでを追跡するシステムを、ブロックチェーンを利用して実証実験を行ないました。医薬品の約30パーセントを占める偽造医薬品が、毎年100万人もの命を奪っていると、DHLは報告しています。DHLとアクセンチュアが共同開発したシステムにより、製薬会社や倉庫業者、仲介・販売業者、薬局や病院、医師などの関係者で台帳を管理し、全履歴を追跡できるようにしたといいます。ブロックチェーンにより、たとえば仲介業者による情報の改ざんを減らすことができれば、偽造のリスクが減り、人命救助に大きく貢献することが可能になります。

日本でも2017年10月から、医薬品の直接売買をブロックチェーンで管理する試みが行われています。北海道で発足したブロックチェーン技術の基盤を想像することを目的とした任意団体『ブロックチェーン北海道イノベーションプログラム(BHIP)』が、出版社のファーストプレスとともに、ブロックチェーンを活用した医薬品の販売プラットフォームの実証実験を行ないました。

人件費削減に貢献するブロックチェーン


BHIPの試みの背景は、前掲のDHLのケースと若干異なります。日本では、医療費削減の流れから調剤報酬の引き下げにより、薬価差益が縮小し、利益率が恒常的に下落しています。またジェネリック薬品の普及により、常備する在庫品が増加しているため、デッドストック(不動在庫)の医薬品が在庫を圧迫します。そのため、効率的な薬局経営をさらに推し進めるなければいけないという事情が、背景にあります。

BHIPは実証実験のために、システム内部で利用できる独自の暗号資産を用いた取引を行ない医薬品売買を可能にするシステムを構築しました。不正取引が行われないかなどを追跡するトレーサビリティの実現性や、改ざんなどの攻撃に対する耐性、コスト削減の可能性等について、BHIPはシステム実現に向けて検証を続けています。

まとめ

日本では、物流システムの信頼性が高く、ブロックチェーンを利用した物流システムの改善が、切迫した問題として顕在化していません。他方海外では、宅配業者や医薬品売買など、物流システムのレベルが決して高くありません。そのため、ブロックチェーンを活用したシステムの実証実験に取り組み、すでに商用化したケースもみられます。

日本でも、少子高齢化による人材不足や、人件費の削除などから、ブロックチェーンを導入してコストを削減したり、社会インフラ全体を変革する動きがみられます。また2019年1月末に実施された「Japan Blockchain Conference YOKOHAMA Round 2019」では、日本IBMがブロックチェーン技術の本格活用事例に言及するなど、今後の展開が期待されます。

<参考>
「北海道や札幌市などが参画する『ブロックチェーン北海道イノベーションプログラム』ブロックチェーンを活用した医薬品売買システムのPoCを完了」(INDETAIL)
https://www.indetail.co.jp/news/15847/
「ブロックチェーンを活用した医薬品の デッドストック販売プラットフォーム」(BLOCKCHAIN ONLINE)
https://blockchain-jp.com/wp-content/uploads/2018/10/drugPoC_Report_F2.0.1_BHIP.pdf
「ブロックチェーン上で契約をプログラム化する仕組み「スマートコントラクト」」(Blockchain biz)
https://gaiax-blockchain.com/smart-contract
「日本IBM、3つのブロックチェーン活用事例が本格運用段階へ」(COINPOST)
https://coinpost.jp/?p=67001
「ブロックチェーンでサプライチェーン・ロジスティクスをコネクト」(『MATERIAL FLOW』2018年7月号)
「管理者なしで高信頼のデータ流通 IoTも業界横断型に変わる」(『NIKKEI COMMUNICATION』2017年1月号)
「ブロックチェーン×ロジスティクス」(『LOGI-BIZ』2019年1月号)

友だち追加