トークン不動産(不動産テック)が変える新しい投資の形

不動産投資でデジタル革命が起きている——。暗号資産の投資家として十分な経験を積んだ方でも、こうした情報を知らないという場合も多いかもしれません。今、ブロックチェーンは金融分野を飛び越え、とうとう不動産という分野でも注目を集めるようになりました。

それが、証券のトークン化(STO)です。不動産投資における様々な情報をブロックチェーンに格納し、投資家は資金を投じた金額に応じてトークンを受け取ります。そのトークンを保有していれば、それだけで家賃収入が受け取れるという仕組みがアメリカを中心に広がりつつあるのです。

今回は、そうしたSTOの仕組みやトークン不動産の特徴、将来性などを詳しく探っていきましょう。

 

トークン(デジタル権利証)で不動産投資が可能な世の中に

rawpixel / Pixabay

ブロックチェーンを活用した不動産投資が、特にアメリカを中心に話題を集めています。ニューヨーク・マンハッタンのコンドミニアム(日本でいうマンション)では、トークン(暗号資産型の代用貨幣)を使った資金調達が活発です。

トークンはデジタル権利証とも呼ばれ、投資家はデベロッパーの建設費用を現金で投資する代わりに、このトークンを受け取ります。トークンを保有する人は、不動産からあがる家賃収入などを得る権利を得られ、さらに交換業者を通じてトークンを売却することも可能です。

前述したコンドミニアムが投資家から集めた資金は3,000万ドル(約33億円)にも上ります。さらに、コロラド州の高級リゾートホテル、セント・レジス・アスペン・リゾートは同じ仕組みで1,800万ドル(約20億円)ものトークンを発行しました。

従来の不動産投資では、物件からあがる賃料収入などの権利を小口化した証券化が一般的でしたが、もしかしたら今後の証券はトークンにとって代わる可能性すらあります。この仕組みをICO(Initial Coin Offering)にちなんで、STO(Security Token Offering)と呼ばれます。

トークンにはブロックチェーンシステムが大いに関わっていることが特徴の一つです。すなわち、物件に関する書類や契約情報、経費、配当金、賃料収入といったデータはすべて、改ざん不可能とされるブロックチェーン上に保管されます。投資家やデベロッパーなど、不動産ネットワークの参加者たちは、いつでもブロックチェーン上の情報にアクセスでき、従来よりも簡単な手続きで不動産投資を行えるようになるということです。

クラウドファンディングを活用したSTO事例

トークン不動産の代名詞でもあるSTOは、過去にクラウドファンディングを活用した事例も話題を呼びました。先ほど紹介したコロラド州にある高級ホテル、セント・レジス・アスペン・リゾートは、クラウドファンディングプラットフォームである「Indiegogo」でSTOを行ったことでもお馴染みです。

今までのICOであれば、資金調達を行う事業者の公式ホームページからトークンセールに参加することが一般的でした。しかし、クラウドファンディングなど特定のサービスサイトを中継することで、「事業者の審査」というセキュリティチェックが加わります。

なかには詐欺トークンも多いとされてきたICOだけに、クラウドファンディングなどを通じた新しい販売方法が盛んになると、より投資家が安心して資金を提供できる環境が整っていくことが予想できます。

(参考:COINPOST、2018/10/10、不動産トークン化の未来:高級ホテルが「STO」で20億円の資金調達成功

トークン不動産(STO)のメリット・デメリット

ブロックチェーンなど新たなテクノロジーを組み合わせた不動産投資、いわゆる「不動産テック」が注目を集めています。証券のトークン化という取り組みは単なる「点」ではなく、FintechやAIなどのテクノロジーを巻き込んだ大きな「線と面」を構築していくことでしょう。

このような不動産におけるSTOには、いくつかメリットとデメリットがあります。

【トークン不動産のメリット】
・仲介会社(ブローカー)が要らずデベロッパーとの直接契約が可能
・ブロックチェーンへの情報データ保管・参照ができ、業務効率化と手数料削減が可能
・投資家は簡単な手続きで不動産投資を行えるようになる
・情報を分散管理することで改ざんやハッキングに強い

【トークン不動産のデメリット】
・ブローカーの保証がなくなり取引の流動性が低くなる懸念がある
・ほぼすべての情報が共有されるため、プロジェクトの匿名性が保てない可能性も
・匿名性の高いブロックチェーンの場合はマネーロンダリングの危険性あり

新しい不動産投資として注目を集めるSTOですが、当然メリットとデメリットの両面があることを忘れてはいけません。ブロックチェーン上の情報管理は、コスト削減やセキュリティ向上などの恩恵がある一方、誰でもデータや取引内容を参照できるという点に課題がありそうです。

トークン不動産=不動産テックの将来性

STOには長所と短所の両面があることは間違いありませんが、ICOに変わる資金調達手段として、今後は暗号資産市場のなかで存在感を増していく可能性が高いです。STOは有価証券など価値のある資産を担保とする点に特徴があり、反対にICOにはその仕組みはありません。簡単にいえば、投資家が安心して資金を預けられるのがSTOということです。

不動産以外の分野でも、アメリカのスピン(Spin/キックスケーター)やオーバーストック(Overstock/余剰在庫販売)がSTOを行い、短期間に100億円以上もの資金を調達したことでも知られます。

このように、証券をトークン化する仕組みは様々な業種に伝播し、ICOに変わる資金調達手段と認知されても決して不思議ではありません。暗号資産に投資する方にとっても、その将来性は見逃せないでしょう。

まとめ

今までであれば、ICOで発行されるトークンは何となく「暗号資産(仮想通貨)のようなもの」というイメージがありました。プロジェクトのビジネスモデルに共感し、将来的に値段が上がりそうな事業であれば、そのトークンを購入することで後々売却益を得ることができます。

一方、トークン不動産に見られるようなSTOでは、トークン=デジタル権利証という意味合いが強く表れています。トークンを売却して資金化せずとも、それを保有しているだけで家賃収入などの利益が期待できるというものです。

価格変動の激しい暗号資産市場では、そのトークンの価値も日によって大きく上下します。それだけにハイリスクハイリターンの投資になりやすく、これからはより安定性を求めたSTOにシフトしていく可能性も考えられるでしょう。

アメリカ以外の国々、特に日本でどのようにSTOが活用されるのか、今後の取り組みに要注目です。

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