アップルの暗号資産向けシステム「CryptoTokenKit」とは?iPhoneのセキュリティ向上に期待

2019年6月に公開されたフェイスブックの独自通貨「リブラ」。一般紙や全国ニュースでも取り上げられるほど大きな話題となっています。

しかし、その裏で静かに公表された暗号資産関連のニュースがあります。それが、米アップルのCryptoTokenKitという新たなフレームワークです。リブラのニュースがあまりにも大々的だったため、CryptoTokenKitに注目する人は少数派となっていますが、実はリブラにも匹敵するほど暗号資産市場に甚大な影響をもたらすことが予想できます。

今回は、そんなCryptoTokenKitについて詳しい解説を行うとともに、アップルのブロックチェーン導入による市場へのインパクトを考察します。

米アップルが暗号資産向けシステム「CryptoTokenKit」を発表

米アップルは、2019年6月5日に「CryptoTokenKit(クリプトトークンキット)」を発表しました。CryptoTokenKitとは、iOS13用に暗号機能を追加するフレームワークのことです。セキュリティキーの生成や暗号化などの操作をiOSアプリ上で行える機能で、デジタル署名の作成や評価といった作業が効率的に実施できるようになります。

たとえば、アップルユーザーであればiPhone製品を利用して、自身が保有している暗号資産の秘密鍵を保管したり、高セキュリティ状態で管理することが可能です。

このCryptoTokenKitは、アップルのWebサイト上で密かに公開されました。その理由は、このサービスがエンドユーザー向けに提供される内容ではなく、主にブロックチェーン開発者向けのツールセットになっているからです。こうした取り組みはアップルのみならず、マイクロソフトなども積極的に行っており、こちらもイーサリアム向けのスマートコントラクト監査ツールである「ベリソル」というフレームワークを発表しています。

ただし、アップルは次回のiOS13アップデート時にCryptoTokenKitをリリースする予定で、新型のiPhoneにも機能が搭載される見込みです。そのため、今後のiPhoneは、スマホの画面からデジタル署名や秘密鍵の管理ができるようになり、後々はハードウェアウォレット等の製品へとつながっていくことが予想できます。

すでに暗号資産に投資している方にとっても便利な機能が実装されるため、ここで簡単にCryptoTokenKitの特徴や仕組みについて知っておきましょう。

CryptoTokenKit(クリプトトークンキット)の特徴・仕組み

CryptoTokenKitは、暗号機能に必要な操作をiOSアプリに統合することができるフレームワークです。現状では暗号資産と直接的に関わることは少ないと思われますが、今後はiPhoneへのハードウェアウォレット実装などに繋がることも予想され、ApplePayと暗号資産決済の統合などにも大きな影響を与えるでしょう。

たとえば、今までの暗号資産管理には、スマホとは別に専用の機器(ハードウェアウォレット)が必要になるなど、購入の費用と手間がかかってしまいました。しかし、今後はiPhone一台あれば高セキュリティのハードウェアウォレットが自動的に付属されることになり、暗号資産の投資家にとっては大きなメリットとなります。

ハードウェアウォレットを内蔵したスマホはサムスンも開発中

アップルのライバルでもあるサムスンも暗号資産市場に積極的に介入しようとしています。サムスンが2019年2月に発売したGalaxy S10は、秘密鍵の保管を可能としたウォレットを持つ画期的なスマホです。一方で、Galaxy S10も完全にブロックチェーンと繋がっているわけではないので、アップルのCryptoTokenKitが目指すようなハードウェアウォレット構想には程遠いといえます。

一方で、CryptoTokenKitは次世代iPhoneに実装予定で、2019年秋頃には発売予定です。まだ未発表ではあるものの、この時点で世界初のハードウェアウォレット付きのスマホが誕生するかもしれないということになります。

クレジット業界に参入したアップル|次なる目標は暗号資産による決済ソリューション

アップルの暗号資産への取り組みで、もう一つ見逃せないニュースがあります。それが、2019年3月に行ったクレジットカード業界への参入です。2019年6月21日の現時点で分かっている情報は、アップルはゴールドマン・サックス・グループと共同で、独自のクレジットカード「アップルカード(Apple Card)」のベータテストを開始したようです。

こうしたニュースから、現在のアップルは世界的企業による独自決済システムの創造をもくろんでいることは明らかでしょう。すると、その先に見えてくるのはブロックチェーンとの共生、すなわち暗号資産を利用した決済システムへの参入です。

CryptoTokenKitによってiPhoneから暗号鍵の管理ができるようになり、さらにアップルカードが流通すれば、今まで取引所を利用した購入が主流だった暗号資産もクレジットカードから手軽に購入できることも考えられます。また、アップルを主軸に暗号資産ネットワークが形成されることで、スマホから様々なデータへとアクセスできる新しいブロックチェーン経済圏が形成される可能性も広がります。

最近では、GAFAのフェイスブックが独自の暗号資産「リブラ」のリリースを発表した話題で持ちきりですが、この裏ではアップルが着々と暗号資産市場への躍進を狙っていることも忘れてはいけません。

まとめ

CryptoTokenKitのリリースが公表されてから約2週間、このニュースはいまだに大きな波紋を呼んでいません。アップルの公式サイトで静かに公開されたことが大きな理由でしょう。

しかし、CryptoTokenKitの発表は、世間で騒がれるリブラの公表と同じか、もしくはそれ以上のインパクトを及ぼすかもしれません。このフレームワークがiPhoneなどに実装されることで、ユーザーにとって暗号資産はより身近な存在となり、その先ApplePayと暗号資産を連動させた決済ソリューションを提供することは容易に想像がつきます。

もしかしたら、気づいたときには暗号資産市場で大きな存在感を発揮しているのは、グーグルやフェイスブックでもなく、このアップルなのかも……。

友だち追加